校正の仕事を始めたい人に必要なこと

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これから校正の仕事を始めようとする人に向けた記事です。主婦の方が、家事や育児の合間にできる仕事として昔からよく候補に挙がる職種だと思うのですが、いざ仕事を始めるには何が必要かということをお話しします。

国語力・注意力・集中力

仕事の内容については、以前「校正者は何を見てるか」という記事でざっくりと書きました。誤字脱字を見つけるのはもちろん、文章全体で矛盾したことを言っていないか言い回しや言葉の接続(×:上を見上げる→◯:上を見る、×:明るみになる→◯:明るみに出る・明らかになる)などもチェックします。これに気づくには、文が論理的かどうか判断したり、正しい用法が何か知っている必要があります。つまり、国語力が必要です。本をよく読んでいる人は比較的得意かもしれませんが、普通の読書と違う点として、書いてあることをすべて受け入れるのではなく「本当に正しいか」を吟味しながら読む必要があります。

読むときには、作業効率の観点から言うとスピードもある程度重要になってきますが、見落としを極力なくさなくてはいけません。同じ文章を何度も読み返さなくてすむよう、集中して一度に多くの誤りを見つけます。よく出てくる単語に表記揺れはないかどういう単語に表記揺れが多いか、あるいは一つの単語の中でどの表記が多いか(いう・言う、もつ・持つ)など。出現数が多い方に合わせて表記を統一することもありますから、どっちが多いか大体把握しながら読み進めることも必要です。クライアントによっては独自の表記ルールが細かく決まっていることもありますから、最低限そのルールに書かれている点は見落としがないようにします。

注意力は、慣れや経験によって培われることが多いかもしれませんが、はじめのうちに見落としやすいものをいくつか紹介しておきます。最近はwebコンテンツの校正の仕事をクラウド上で行うケースが増えていますが、webコンテンツで特に多いのは誤変換です。見間違いやすいものもある(×:週間誌→◯:週刊誌、×:内蔵脂肪→◯:内臓脂肪)ため、仕事に慣れない人が流し読みをしていると簡単に見落とします。

あとは、まれに書籍などの紙媒体をスキャンして文字データにしているものがあり、見た目が似ていて全く違う字が入っていることがあります(×:話を間く→◯:話を聞く)。注意しないと特に見逃しやすいものです。

情報収集力

文章を読んでいて、正しいかどうか分からない部分は調べます。例えば、「お肌のアンチエイジングにはヒアルロン酸がおすすめです。市販のサプリメントを飲むことで手軽に若さを取り戻せます」のような文があったとします。読み流してしまいそうですが、コラーゲンがアンチエイジングに有効かどうか、自分が科学的な根拠を説明できないときには調べます。個人のサイトや販売元の広告はあまりあてになりません。Wikipediaも、作成者が匿名だったりするので信頼性が十分ではありません。公共機関のサイトや刊行物Google Scholor(論文検索エンジン)、専門書など事実を確認できる資料をあたって、「効果がある」と結論づけられている文献があればOKですが、そうでないときには指摘を入れます。上の例だと、次のような指摘になると思います。「ヒアルロン酸には皮膚組織の水分を保つ機能はありますが、サプリメントなどで経口摂取すると分解・全身に吸収されるため、顔の皮膚に直接効果をもたらすとは言い切れません。また、サプリメントは健康食品であって医薬品ではないため、効果を断言することは薬事法で禁じられています。美容皮膚科などで行われるヒアルロン酸注射であれば、顔面に直接注入するため注入部分のシワなどにある程度の効果が見込めます」……長いですね。

ちなみに、文章を直接修正するのではなく、紙面の余白やテキストファイルのコメント機能を使って指摘を記入します。クライアントが困らないように、代替案を入れるとなお良し。上の例では「お肌の潤いを取り戻すには皮膚にヒアルロン酸を補うことが効果的です。市販のサプリメントを飲むと消化・吸収され全身に成分が行き渡りますが、顔のシワにピンポイントで効果を求めるならヒアルロン酸注射がおすすめです、などとしてはいかがでしょうか?」くらいでしょうか。もっと縮めてもいいですが、サプリメントだと顔のシワだけに100%成分が届くわけではないことや、どうすれば顔のアンチエイジングが可能なのかを入れた方が、読者にとって親切かなと思います。

校正の仕事にもいろいろありますが、こういう指摘が必要な校正では情報収集力が高いほど、作業スピードや校正の質が上がります。また、得意分野がある人は、調べる手間が少なくて済む場合がありますからなお有利です(それでも指摘を入れる場合は、文献や信頼できるサイトを参照元として挙げる必要があります)。

資格もいいけど経験が大事

これは個人的な意見ですが、経験に勝るものなしという感じがします。校正の仕事を始めるつもりなら、少しでも早く始めて多くの経験を積む方が今後の仕事につながります。初期の能力が高いに越したことはありませんが、数をこなしている人の方が気づくことが増えるというのも事実。実際に、未経験で資格などがない人でも応募できる仕事はあります(単価や時給はやや低めかもしれませんが)。勉強のためには、毎回通勤するスタイルでその都度仕事の出来ばえを対面評価してもらえるシステムのものがいいと思います。また、同僚の仕事を見て学ぶことができる環境もおすすめです。というのも、最初から完全に一人でクラウド上だけで仕事をすると、フィードバックが受けられないので自分の校正がいいのか悪いのか、成長しているのかすらわかりません。校正した後、その文章が最終的にどうなったかも知ることができないのが普通です(クライアントの判断で校正結果が不採用となる部分もある)。

なお、校正者の資格としては日本エディタースクールの校正技能検定というもがあります。全くの未経験で、仕事を始める前に準備や資格が必要、と感じる方は通信講座などを受けて検定を受けるのもいいと思います。ちなみに私は校正の仕事を8年していますが、この検定を受けたことはありません。資格がないと仕事をさせてもらえない、といったことは今までに1件もありませんでした。実際の採用判断ではクライアントが行うトライアルテストで合格すればいいという場合が多く、経験を通して培われる力を信用して仕事を下さるということもあります。

根気のいる仕事ですし、どこかに自分の名前が載るとかはないので日の目を見ない業種ではありますが、職域の範囲で徹底的に文章と向き合えるという面ではとてもよいものです。職人気質な人が校正者に向いているとも言われます。まあ、いろんな方が校正をしているので一概には言えませんが。。いずれにせよ、文章の質を高めて誤りをなくす大切な仕事だと私は思っています。校正の仕事をしたいと思っている人は、まず始めてみることが一番重要かもしれません。

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