発酵

食中毒と殺菌(3)

以前の記事「食中毒と殺菌(1)」「食中毒と殺菌(2)」の続きです。主に発酵食品をつくるときの話をしています。第1回では殺菌とは何か・家庭でできる容器の殺菌方法食材および保存方法と菌の関係について書きました。第2回では食中毒を引き起こす微生物のうち、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、カンピロバクター、ノロウイルスの特徴を紹介しました。

今回は引き続き、食中毒菌のうち腸炎ビブリオ、病原性大腸菌(O-157)、ウェルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌について書いていきます。

 

腸炎ビブリオ−−感染型

魚介類や海水と同じくらいの塩分濃度(3%)の水の中で生きています(生きるためにナトリウムが必要)。真水で洗わない・加熱が十分でない魚介類には要注意です。特にお刺身やお寿司などが代表的ですが、50年以上前にシラス干しで集団食中毒が起こりました。他には、魚によって汚染された野菜の一夜漬けなんかでも、たまに感染します。15℃以下では活動が鈍るため、冷蔵庫で保存するのは有効。しかし一方で、増殖速度がとても速いのが特徴です。大腸菌が4時間で1個→4000個に増えるのに対し、腸炎ビブリオはなんと1,000万個にもなります。常温放置で2〜3時間もすると、感染に十分な数に増殖します。魚介類は真水でよく洗って、できればよく加熱して早めに食べるのが大切。

潜伏期間:2時間〜24時間

症状:腹痛、下痢、嘔吐、発熱。2〜3日で自然回復

最適増殖温度:20〜37℃(4℃以下で保存・調理・消費を推奨)

殺菌方法:65℃1分加熱(中心温度)

腸炎ビブリオは感染型の細菌ですが、食中毒を起こすものとしては溶血毒という毒素を出すものが知られています。赤血球を傷つけたり体内の細胞を破壊したりするので、免疫力の弱い人は重症化することがある上、時には心臓に影響を及ぼして死亡する場合もあります

 

病原性大腸菌(O-157)−−毒素型

集団感染でよく話題になり、日本でも毎年感染者が出ています土や水、動物の排泄物など色々な場所にいます。畑でとれた野菜についていることも多いので、よく洗って食べることが予防になります。O-157の特徴は生存期間が長いこと、酸性に強い(胃液で死なない)こと、低温では増えない(でも死なない)こと。常温だと1か月くらい生き延びるので感染拡大しやすいです。8℃以下なら増殖しないので冷蔵庫で食品を保管するのは効果的ですが、冷凍庫に入れても死ぬわけではないので、注意が必要です。高温には弱いので、食べ物にしっかり火を通すことが大切です。

潜伏期間:4〜8日(長い)

症状:腹痛、下痢、血便。5〜10日で自然回復

最適増殖温度:20〜37℃(低温に強く、−50℃でも死なない)

殺菌方法:75℃1分加熱(中心温度)

病原性大腸菌の多くは感染型ですが、O-157はベロ毒素という強力な毒素を出すので毒素型に分類されます。ベロ毒素は数日後に重い合併症(尿毒症、脳症など)を引き起こすことがあり危険です。こうなると病院で長期間の治療が必要になることもあります。抵抗力の強い大人だと症状が軽めで済む場合がありますが、排泄物にO-157が付いていることには変わりません。家族に感染しないように、手洗いや消毒などを徹底する必要があります

 

ウェルシュ菌−−中間型(感染型+毒素型)

土や家畜の排泄物、魚にいます。特に多いのは、肉類。菌が芽胞という芽のようなものを出し、これがものすごく熱に強い上に芽胞ができるとき強力な毒素(エンテロトキシン)を出します。芽胞は菌が死んでも壊れません。ウェルシュ菌は熱に強く酸素が嫌いなので、肉・魚・野菜の入ったカレーやスープを大量に作って常温放置(2時間以上)したりするとよく食中毒を引き起こす。一般家庭よりも給食や飲食店で起こりがちです。カレーなどは前日に調理しないで、作ったら菌が増える前に食べきるか、急速に冷やすことが推奨されます。

潜伏期間:6〜18時間

症状:腹痛、下痢、嘔吐。症状は他より軽め。1〜2日で自然回復

最適増殖温度:15〜50℃(芽胞は高温に強く、100℃40分でも壊れない)

殺菌方法:100℃10分加熱(中心温度。芽胞は壊れない)

 

セレウス菌−−中間型(感染型+毒素型)

土や汚水、ほこりなどありふれた場所に生存しているほか、健康な人の10%には腸の常在菌としてセレウス菌がいます。普段は無害ですが、ウェルシュ菌と同じく芽胞を作り、毒素を出します。米や小麦粉を使った料理から感染することが多いですが、汚染された食事を食べるのではなく血液から菌が入って感染した場合はほぼ無症状(免疫力の弱い乳幼児や高齢者は敗血症を起こして死ぬこともあります)。食中毒の症状には嘔吐型と下痢型があります。

潜伏期間:嘔吐型は1〜5時間、下痢型は8〜16時間

症状:嘔吐型は吐き気、嘔吐、腹痛。下痢型は腹痛、下痢。1〜2日で自然回復

最適増殖温度:4〜50℃(芽胞は高温に強く、100℃30分でも壊れない)

殺菌方法:100℃10分加熱(中心温度。ただし毒素を出す芽胞は壊れない)

ちなみにセレウス菌は、医薬品として使われる高濃度(70%)消毒エタノールに耐えることがあるため、アルコール消毒があてになりません。血液感染は食中毒とは別のものですが、食中毒に関しては、ご飯や麺類を大量に調理した後はできるだけ早めに食べきるか、冷蔵庫など10℃以下の環境に入れて急速に冷やす必要があります。

 

ボツリヌス菌−−毒素型

主に自然の土、海や川にいます。ボツリヌス菌も芽胞を作る菌で、普段は芽胞の形で潜んでいます。空気がない場所を好み、加熱に強いため、缶詰や瓶詰め、真空パックなどの保存食で食中毒が起こり、死亡例もたくさんあります海外では自家製ハムやソーセージが多く、日本では飯寿司(いずし)や辛子れんこんが有名です。また、乳児にはちみつを与えるとボツリヌス中毒を起こすことがあります(はちみつは濃度が高いので空気が少なくボツリヌス菌が生息できますが、大人は腸内に常在菌がたくさんいるので感染しない……けど、乳児は腸内細菌まだいないので体内で増殖し、感染する)。

潜伏期間:8〜36時間

症状:嘔吐、視力障害、言語障害、嚥下困難、呼吸麻痺(発熱はない)。1〜2日で回復

最適増殖温度:10〜40℃

殺菌方法:120℃4分加熱(中心温度。毒素を出す芽胞には100℃2分で失活)

ボツリヌス中毒は自然界で最強の毒素と言われています。神経に障害を及ぼし、回復に長期間かかるため直ちに病院で治療しなくてはいけません。病院で抗毒素を投与されても、治療後数か月は痺れが残る人もいます。発酵食品を作るときは食材をよく洗う容器を清潔にする、酸度や塩分濃度をあげる、などに気をつけましょう。買った食品は賞味期限の間に食べきる冷蔵庫で保管するのが大切です。

※ボツリヌス菌にはいくつかの種類があり、耐熱限度が少し違っているものもあるので、上記の加熱温度はあくまで目安です。

 

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